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健康栄養学科ニュース

お知らせ

後藤教授が一宮市の保育園の調理員研修会で講演をしました

 令和3年11月8日(月)、愛知県一宮市尾西生涯学習センター 大ホールで、一宮市の公私立保育園および小規模保育事業所の調理員の皆さん約80名を対象に「一宮市調理員研修会」が開催され、健康生活学部 健康栄養学科 後藤千穂教授が講師を務めました。

 「いつのまにか食事が楽しくなる仕掛けづくり ~子どもの食生活とナッジ~」と題し、従来型の積極的な食育(食を選択する力を身につけ、実践につなげる)も重要ですが、気づかれない食育(意識しなくても健康的な食生活になるような仕掛けづくり)や環境整備も必要で、気づかれない食育ではナッジ理論が有効なことが話されました。ナッジとは「肘でそっとつつく」という意味で、人々が行動を選択するときのくせを理解して、強制することなく、人々の行動を望ましい行動に誘導するアプローチのことです。人は1日に何度も何を食べるか決断していることから、このナッジの考え方は健康的な選択を促す環境づくりに役立ちます。ナッジの構成要素としてEAST(Easy, Attractive, Social, Timely)について、具体例を示して解説しました。

 次に近年の新型コロナウイルス感染症の影響で、自宅で食事を食べる人や料理を作る人が増え、家族と食事を食べることも多くなっている状況について説明がありました。家庭食が重要になってきていますが、愛知県は県全体として野菜摂取量が低い県です。また、魚や野菜の摂取量は家庭の経済的な影響を受けることから、保育園での給食は、家庭とは異なる食体験の機会となり、さらにその重要性が高まっています。さらに一宮市は高血圧が多い傾向にある地域であり、高血圧対策として減塩の推奨が必要です。野菜に含まれるカリウムは、食塩(ナトリウム)の排泄に働きますが、食塩をどれだけとっても野菜さえ食べていればよいというわけではなく、カリウムが血圧を下げる働きは、食塩摂取量が低い時に効果があることから、やはり前提としては減塩した上で野菜を食べることが大切であると説明されました。また家庭単位の食塩摂取量と循環器系疾患の死亡リスクに関連がある事が示され、家庭単位での減塩の取り組みも必要であることも話されました。
また減塩については、新生児期の減塩によって血圧に影響し、その後も長期間にわたって減塩の影響が続くことから、保育園でも薄味を心がけることで、長期的に有効であることが示されました。以上の話を科学的根拠のデータを示しながら解説されたため、参加者の皆さんは、熱心にメモをとっていらっしゃいました。

 参加者からは、「近年の研究結果や興味ある話題も話してもらって良かったです。」、「改めて『食』の大切さを考えることができました。」など、分かりやすい解説で大変参考になったようでした。今後も地域の皆様に本学の教育研究を還元していきます。