学園の将来像
人とのふれあいを深め、
個の力が光る若者を育てる大学
立学の精神とこころ、学園の基本理念
学校法人滝川学園名古屋文理大学・同短期大学部の「立学の精神」(「建学の精神」)は、「本学は自由と責任を重んじ、学問を通して知識・技術を磨き、健康を増進し、特に品性を高め、正しい歴史観と人生観をつちかい、世界から信頼される日本人を育成する場である」であり、これが本学の基本理念である。この「立学の精神」は滝川学園の創立者滝川一益が、第二次世界大戦の戦前・戦中に経験した、偏った人生観や世界観に支配された苦難の歴史を繰り返さないように、との強い思いに端を発している。この思いのもとに、新しい時代を担う人々が、正しい歴史観・人生観をもって、明るい社会を築くための学びの場を創りたいと念願して、本学の源である「名古屋栄養専門学院」を昭和31(1956)年に創立し、基本理念である「立学の精神」を樹立した。この理念は今日も滝川学園に引き継がれている。
この立学の精神に加えて、滝川一益は、人間味あふれる学園として、学生の人間形成に大学が果たす役割の重要さを日常的に説いており、その思いは大学図書館にある滝川一益の揮毫に残されている。「学苑は良き友をつくる場であると共に生涯忘れ得ぬ思い出をつくる場である」。この言葉は、友と共に学びあうことの大切さについて、創立者から学生に対する強いメッセージであり、その思いは、今も本学の伝統として引き継がれている。
「本学は自由と責任を重んじ、学問を通して知識・技術を磨き、健康を増進し、特に品性を高め、正しい歴史観と人生観をつちかい、世界から信頼される日本人を育成する場である」
「学苑は良き友をつくる場であると共に生涯忘れ得ぬ思い出をつくる場である」
学園では、滝川一益による「立学の精神」とともに、その理念を現代の若者が理解しやすいように以下のような解説を用意し、「立学の精神のこころ」として学内に周知させている。
- 名古屋文理は、人が自由に生きることを尊重し、さらに社会生活での責任を果たすことができる人間を育てます。
- 名古屋文理は、科学技術進展の担い手である教員の手によって、基礎から専門に至る知識や技術を修得した専門家を育てます。
- 名古屋文理は、教育・研究および学生生活を通して、心身ともに健康な人間を育てます。
- 名古屋文理は、規律を守り、礼節をわきまえ、堅実で、すぐれたものに対して感動する心を持つ人間を育てます。
- 名古屋文理は、先達の築いた歴史や歩んだ人生を正面から見つめ、自分の人生に生かすことのできる人間を育てます。
- 名古屋文理は、自由と責任を重んずる専門家を育成する教育機関として、人間力の涵養に力を注ぎ、世界の誰からも信頼される人間を育成します。
「立学の精神」のなかの「学問を通して知識・技術を磨き」は学びの場を創るとき、すなわち教育をおこなうときの理念として重きをおかれた。昭和16(1941)年設立の名古屋地域唯一の栄養・食品に関する民間の研究施設であった野原研究所(後の食糧科学研究所)では、航空(宇宙)食やビタミン食といった先端研究がおこなわれていた。当時の食料問題は、不足する食料をどのように確保するか、ということが優先されていたが、戦後滝川一益はこの研究所の運営に関わる中で、学問に裏付けられた研究実績に基づいた栄養学の普及に力を注いだ。その後名称を財団法人「食料科学研究所」としてからは、健康の維持には、量の確保だけではなく、栄養学に基づいた食品の質を重視すべきだとの考えを持って、これらの研究をより深め、広く伝えてゆく場として、「本学の源となる「名古屋栄養専門学院」を創立し、「学問を通して知識・技術を磨く」ことを教育の重要な理念とした。
「名古屋栄養専門学院」はその後昭和41年に創立される「名古屋栄養短期大学」(現名古屋文理大学短期大学部)の母体となるとともに、地域の栄養士養成を目ざす「名古屋文理栄養士専門学校」として今日に至っている。「名古屋栄養短期大学」は数多くの栄養士を養成し、東海地区を中心に多くの人材を送り出してきた。学園の拡充とともに、栄養士養成に加え経営、情報などの専門教育にも内容を拡大してきた。平成11(1999)年にこの短期大学を母体として4年制大学である名古屋文理大学を開学した。現在では大学2学部3学科、短期大学部1学科を擁する滝川学園として発展を続けている。学園全体では「立学の精神」、「立学の精神のこころ」を共にし、「学問を通して知識・技術を磨き」を教育理念として重きをおいている。
学園の使命と目的、および教育目的
滝川学園名古屋文理大学・同短期大学部は「立学の精神」の具現化を使命とし、また目的としている。本学の源流は「食」に関わる教育であり、その後分野を「生活」、「情報」にも広げ、現在の教育研究の柱である「食」「栄養」「情報」につながっている。これからもこの教育事業を継続し、伝統ある「食と栄養と情報の大学」として発展していくことで高等教育機関としての使命を果たしていく。
教育の原点は「教えること」、「学ぶこと」をもとにした「人づくり」である。これは創立者滝川一益の「立学の精神」や揮毫の精神でもある。「人づくり」には個性のふれあいが要であり、大学の授業、ゼミ、図書館、サークルなどのふれあいの空間で、「出会う」、「学ぶ」、「教える」、「話し合う」、「議論する」などを通して学生の個々の能力を磨いていく。本学は学生総数が小規模な学園であり、学生間あるいは学生と教職員がふれあい、お互いの顔や名前を覚え個人として交流することができる。また、世界の誰からも信頼される人間の育成を目指す観点から、学習意欲が有れば社会人や外国人など年齢・国籍等を問わない、多様な学生を受け入れるユニバーサルアクセス型の大学を目ざしている。本学はこのように交流密度が高いことと学生の多様性を「人づくり」をおこなうための利点とし、学生と教職員とのふれあいや学生同士のふれあいを深め、人生観をやしない、またコミュニケーション能力を最大限に高めていくことに大きな力を発揮できる。この「ふれあいの大学」で心身ともに健康な人間を育成するとともに感動する心の醸成に努め、これからの社会をつくる若者を育てていく。
また創立以来の教育理念「学問を通して知識・技術を磨く」によって、学生の知識を深め、個性に合った技能を身につけさせ高度に磨いていくことも、高等教育機関としての本学の重要な使命である。現在日本は人口の減少や経済の長期低迷などがあり、国としての将来の道のりは平易ではない。国民全体の持つ知恵や能力を高めることがこうした課題を解決する唯一の手段であり、教育立国として若者の教育はますます重要となる。名古屋文理には半世紀の歴史があり栄養士など高い技能をもった若者を世に送り出して来た。今後も「食」「栄養」「情報」の分野で高度な能力と技能をもち、社会的職業的に自立できる日本の後継人材の育成をおこなう。このような「個の力」、すなわち若者のもつ潜在能力を最大限に引き出し、磨き、光輝かせることを使命感をもって達成していく。
以上のように本学の使命と目的は「人とのふれあいを深め、個の力が光る若者を育てる大学」として集約でき、個性・特色もここにある。またこの使命と目的を達成することが本学の教育目的である。
立学の精神とその具現化である学園の使命・目的にもとづき、各学部・学科において新しい時代にふさわしい、信頼される専門家になるための人間力の養成をめざした教育課程を編成する。教育課程のもとになるのは、以下に記されている立学の精神にもとづき作成された教育方針である。
- 学問と技術の練磨:21世紀に貢献する科学文化を、基礎、応用の両面にわたって修得させ、教養を高め、識見を深める
- 心身の強化:精神力と健康の重要性を体得し、自由と責任を重んずる精神と強健な身体の育成に努める
- 思索力の養成:古今東西の文献に親しみ、思索を重ね、自らの価値観を創造すると同時に、優れた判断力を養う
- 品性の陶冶:豊かな情操をつちかい、規律を守り、礼節を貴び、堅実にして高邁な人間性を育てる
- 正しい人生観の涵養:広く世界の歴史と文化を学び、よき伝統を認め、将来の動向を洞察して、正しい歴史観と人生観を確立する
- 信頼される日本人の育成:人間の尊厳を知ると共に社会生活のあり方をよく認識して、国家の発展と人類福祉の増進、世界平和の実現に寄与する
学園のビジョン10項目
滝川学園名古屋文理大学・同短期大学部は立学の精神の具現化を使命として、「人とのふれあいを深め、個の力が光る若者を育てる大学」として発展していく。ここに述べられているビジョンは、学園の未来像であり、全ての教職員・学生の道標となるものである。
学園全体
01.「人づくり」は本学の基本的な理念である
教育は合理性の追求により画一化されたものであってはならない。知識や技術を教えるとともに、人としてのありようを教える人間教育が大切である。学生は成長期の途上であることから規律・礼節やコミュニケーション力など「人間力」の不十分な者も多い。学園には教室を始めとしてゼミ室、図書室、サークル室、談話室などさまざまな教職員や学生がふれあう空間がある。そこで教える,学ぶ、あるいは喜ぶ、悩むなど学修や苦楽をともにすることで、心身ともに健康な人間を育成するとともに、感動する心の醸成に努める。ふれあいによる人間力育成は、「立学の精神」が根源であることを大学ディプロマポリシーに明示して、全ての授業や学生生活を通して実行する。
02.ユニバーサルアクセスの大学として広く学生を受け入れる
世界の誰からも信頼される人間の育成を目ざす観点から、学習意欲が有れば年齢・国籍等を問わない、多様な学生を受け入れるユニバーサルアクセスの大学を実現する。日本各地からの高校の卒業者、さらに社会人や外国人など様々な学生が集うことで、人が持つ価値観の違いや人の多様性について、さらに人の自由と責任について学ぶ。
03.伝統を重んじるとともに新しいことに果敢にいどんでいく
少子高齢化とそれにともなう学齢期人口の減少や経済の長期低迷など、日本がこれから歩もうとする道のりは平坦ではない。資源の無い日本は、教育で成り立つ国と言ってよく、我々の持つ知恵こそが我国の将来の課題を解決する唯一の手段である。学園には半世紀の歴史によって造り上げた「食」「栄養」「情報」の成果があり大きな伝統となっている。我々はこの伝統を継承するともに、新しい技術や大胆な発想を取り入れることで未来に挑戦していく。すなわち良き伝統を生かしながら、新しい滝川学園を創っていくことを常に心がける。
教育
04.高度な知識技術をもった専門家を養成する
「立学の精神」のなかの「学問を通して知識・技術を磨き」については、本学が若者に社会で活躍するための高度な能力と技能を身につけさせるため重んじているところである。これまで築いてきた「食」「栄養」「情報」の分野で基礎から専門に至る知識や技術を習得した専門家を養成し、社会に送り出していくのが教育面での第一の責務である。
05.個に対応したきめ細かな教育をおこなう
学生ひとり一人の成長を促す教育により学生の学習成果を向上させる。これには明確な学生の学習成果の向上(SLOs)を実現するために数値目標を定めて実践していくことや、教育の質の保証を第三者からも理解されやすい形で実現することが含まれる。このための「文理仕様の教育」では、多様な学生ひとり一人を個別にとらえて「ふれあい」により個々の成長を促していくことや、専門教育において「指導教員制」「少人数演習」を取り入れ学生個人に細かな指導をおこなうことで、すべての学生に大学教育の質の保証を徹底する。
06.基礎学力を高める教育をおこなう
本学は広く学生を受け入れるユニバーサルアクセスの大学である。さまざまな基礎学力や学習習慣、あるいは潜在能力をもった学生が各学科に入り専門の知識や技術を学んでいく。全入学生を対象に、特に国語力や数的処理に関して特別なカリキュラムを編成し、専門分野を理解・学習していくための入り口とする。このため本学にユニークな「基礎教育センター」を設置する。センターでは個人の学習カルテをつくり効果的な指導を進め、各学生の基礎学力向上をすすめる。
研究
07.食と栄養の殿堂実現が直近の課題である
学園の伝統を引き継ぎ、国民の健康を食と栄養の教育と研究によって担う「食と栄養の殿堂」構築を直近のビジョンに据えて実現していく。そのために「食と栄養研究所」を立ち上げ、この中でこれまでの本学の研究成果をもとに食育、医療、食品などと結びついた分野で特色ある研究を進める。食と栄養は人が生きているための最も基本的なものであり、本学の先達の築いた歴史を尊び未来に向けた新たな食と栄養の文化を創造する。
学生支援、学生サービス
08.キャリア形成の積極的な支援と、経済的に苦しい若者を支援する
グローバル化した世界の中で、少子高齢化、財政、エネルギーなど日本が抱える課題はかつて経験したことの無いほど大きくなっている。今後求められるのは、知恵を生かし、勇気と忍耐をもって問題を解決できる人材である。困難な問題を解決することにより世界から信頼される人間を生み出すために、技術・知識を身につけ、「個の力が光る」学生を日本の後継者として送りだしていく。そのためキャリア形成を積極的に支援するキャリアセンターの充実・拡充を図る。また学園の奨学金制度を充実させ「高い資質や明確な進学意志がありながら経済的理由で高等教育機関へ進学できない者」を積極的に支援する。さらに就学時期においても経済的負担が掛からない仕組みを構築する。
地域および社会連携
09.地域連携、社会連携や、さらに高大連携を進める
大学のある稲沢市を拠点に西尾張地区、短大部のある西区を拠点に名古屋市、さらに学園全体と東海地区などの観点から、さらにこれまでの就職実績や地域・社会貢献の実績を踏まえ、「地域の生涯学習の拠点」「社会貢献」「インターンシップ」「連携をとおしての幅広い職業人の養成」などの実現を進める。また企業との教育連携、受託研究及び共同研究など産官学連携を進める。さらに高校生が将来の進路をより幅広く選択できるようにするため高大連携を推進し、連携用の本学Webページの整備や行政・高校等との連携契約の推進、出前講義、入学前学習支援などを積極的に実施する。このような様々な連携事業を全学的に進めるための中核組織として、本学に「地域連携センター」を設置する。
財務運営
10.財務の安定化と運営効率化を進める
大学は教育研究活動を目的とする公共性の高い法人であり、財務の健全化と情報公開が求められる。財務では学園全体の安定的な発展のためには学生数の恒常的な確保による財務健全化が最も重要である。また新しいビジョンの実現には更なる財政的な裏付けが必要であり、優先順位を付して立案・実行していく。また学園運営における規模のメリットを享受するために規模拡大を検討する。健全化には支出抑制も必要であり、教育の質を下げないような効率化を進めていく。さらに競争的外部資金の獲得や企業や自治体等からの助成金や補助金の確保をめざす。また運営では常に省力化と効率化を検討し、電子化システム導入を進めることや、責任と権限の明確化及び指揮命令系統を明確にし、内部統制が取れた体制づくりを進めることを課題とする。