名古屋市立高校 進路ガイダンス

議事録

1. 講義概要

「情報」分野に関するガイダンスであり、特に情報教育、情報デザイン、及び先端技術(プロジェクションマッピング、3Dプリンター、レーザー加工機等)の活用を中心テーマとして展開された。ガイダンスの構成は、自己紹介、大学および講師の専門分野紹介、具体的事例の提示、そして受講生との対話・ディスカッションから成る。


2. 講師紹介および背景

講師は、名古屋文理大学において情報教育を専門とし、情報メディア学、デザイン、プロジェクションマッピング等を含む広範な分野での研究や実践を展開している。高等学校への提供においては既存の教科にとどまらず、最新技術を取り入れた実験的・体験的な授業設計を行っており、受講生には新たな発想と実践力の涵養を促している。また、講師は自ら著書を発行し、共通テストの問題との関連性を示すなど、学内外における情報教育の普及にも寄与している。


3. 講義内容の要点

(1) 情報系の学問領域の広がり

  • 定義と意義
    講師は、情報系とは単なるコンピュータ利用に留まらず、「人に関する理解」や「伝達手段としてのデザイン」の側面も含む広範な領域であることを強調。具体例として、ピクトグラム(例:非常口マーク)の設計とその機能的意味が取り上げられ、記号の形状のみから情報を伝達する仕組みについて議論した。

  • デザインの役割と色彩論
    講義内では、緑色の採用理由についての考察が行われ、情報伝達における視認性や対比効果、さらに安全・避難を連想させる色彩心理について触れた。

(2) 先端技術の教育現場への導入

  • プロジェクションマッピングと3Dプリンタ
    講師は、自身の学生時代の制作事例(プロジェクションマッピング)を紹介し、3Dプリンタを用いた制作工程や、素材(植物性樹脂等)、及びその応用例を実演。これらの技術が情報デザインの実践的ツールとしてどのように活用されているかを具体例を交えて解説した。そのうえで持参した3Dプリンタを動作させ出力の様子を観察した。

  • レーザー加工機の利用とその普及
    また、レーザー加工機による部品製作の事例や、その経済性(近年、低価格化が進展している点)についても説明。これにより、理論だけではなく実践的な技能の習得が、現代の教育現場において重要視されていることが示された。

(3) 情報教育の多面的側面と大学の取り組み

  • 学際的アプローチ
    講師は、情報系の教育・研究が理工学のみならず、心理学、経済学、芸術、法学等と連携して展開される必要性について論じた。具体的には、情報伝達のデザインや、プログラムによるシステム構築、そして教育リテラシーの向上に焦点が当てられた。

  • 大学教育の改革と未来展望
    大学のパンフレット紹介を通して、学科横断的な学びや、情報メディア学部の特色、そして入試・補助金制度を背景とした大学経営の現状についても言及。講師は、未来の教育環境において、AIの活用や技術革新がもたらす変革に対応するための人材育成の重要性を説いた。


4. 受講生との対話およびディスカッション

講義中は、受講生への問いかけやディスカッションが盛んに行われ、特に以下の点が議論された。

  • ピクトグラムの意義
    受講生は、非常口マークをはじめとする各種ピクトグラムの機能的役割や、デザインにおけるその重要性について自ら考察する機会が設けられた。
  • 制作実践の体験
    実際に3Dプリンターによる造形工程や、レーザー加工機のデモンストレーションを通じて、技術的プロセスへの理解が深められた。
  • 情報教育の未来像
    AI時代における学習の変革、及び情報デザインがもたらす多面的な影響について、受講生と講師との間で意見交換が行われた。

5. 総括および今後の展望

本講義は、従来の情報系教育が単なる技術習得にとどまらず、デザインや人間理解、学際的連携を含む広範な領域であることを示すものとなった。

  • 教育実践としての意義
    情報教育における実践的技術(プロジェクションマッピング、3Dプリンタ、レーザー加工機など)の導入は、学生の創造性や問題解決能力を高め、実社会での応用力を養う上で有効であると認識された。
  • 研究と実践の融合
    講師は、今後も「情報教育の新たな潮流」を模索しながら、日本発・世界発のイノベーション創出を目指す姿勢を強調。特に、ピクトグラムと対話するメソッドなど、独自の研究アプローチが注目される。
  • 大学選択と学生育成の示唆
    最後に、受講生に対して、自身の意見や創造的な発想を大切にし、大学選びにおいては研究者の活動や教育内容に注目するよう助言がなされた。

結語

本講義は、情報教育および情報デザインの多面的意義を体系的に提示するとともに、実践的技術の活用例を通じて、受講生に新たな視点と挑戦の機会を提供した。今後も、学際的アプローチと最新技術の導入による教育改革が進展することが期待される。

ガイダンスの流れ

  • パンフレットを見ながら大学の紹介と情報系学部の特色を伝える
  • 講師が作ったプロジェクションマッピングの作品を映像で提示する
  • 非常口マークを提示し、生徒にピクトグラムの意味を考えさせる
  • ピクトグラムとは何かを生徒同士で話し合わせ、意見を共有する
  • 非常口マークの「色」がなぜ緑なのかを考えさせる
  • 「デザイン」とは日本語で「設計」の意味があることを説明する
  • 「設計」の具体例として、スリットが入ったドアを提示して説明する
  • 3Dプリンタを実際に稼働させて見せる(素材や仕組みを説明)
  • 3Dプリンタを使った教材(鍵の仕組みなど)を例示し、他教科への応用を紹介する
  • 情報分野とは、人間を理解し、活用し、正しく伝える分野を包括することを説明する
  • 「ドラえもんの道具」を題材に、情報技術で実現する可能性を考えさせる
  • 大学が「日本一・日本発・世界一・世界発」の何かを生み出す場所だと説明
  • 情報系では文系・理系を問わず広い分野を学ぶことを強調する
  • 「ピクトグラムが何をしゃべっているか」を永遠の課題として生徒に問いかけ、考えることの重要性を伝える
  • 大学選びは大学名だけでなく、どの研究者のもとで学ぶかを考えることも重要だと説明
  • 「ドラえもんの道具」を例に、情報系の学問の目的や方向性を考えさせる
  • 最後に再び3Dプリンタが制作した完成品を生徒に配布し、生徒の質問に応じる
  • オープンキャンパスへの参加を生徒に促す(具体的な日時を伝えて締めくくる)